ご挨拶 理想の学び舎

日本書道美術館理事長・館長 大城章二

 日本書道美術館は、書道を愛し、流派、会派、門流の垣根を超えて、書道芸術文化の振興・発展に力を尽くしてまいりました。間もなく50年になろうとしています。
 日本書道美術館は、日本教育書道連盟(昭和26年、文検講習会受講者によって結成された)会員の寄附金を積み立てて設立したユニークな存在です。当時の日本教育書道連盟の、多くの会員の「書道を純粋芸術として、正しい方向へ導き、佳い作品を保存し、正しい書道教育を継承実践し、次代へと繋いでいきたい」という情熱の結晶が、日本書道美術館です。
 書道は永い歴史をもち、人々の生活の中で生きつづけ、成長発展して参りました。
 文化・芸術は戦後、芸術運動の大きなうねりの中で、多種多様な表現が実験され、生み出されてきました。書道も例外なく、伝統的表現を固守する派と文字をデフォルメして現代芸術的な表現を試みるものとに進む道が分かれていきました。
 そして、いま、現代書道は、専門家の枠の中での発表活動が主流になり、大きな美術館の大きな展示スペースに合わせ、その作品も巨大化していく状況にあります。趣味として書道を学習する人々もそれに倣い、生活の場と芸術活動の場が遠く離れているようになってしまいました。大作品ならではの迫力、濃墨たっぷりで書かれることによる見応え。大作も魅力的ではあります。戦後の書道界は、応募点数、出品点数を重要視し、妍を競って、団体所属役員と入選作品が所狭しと展示されています。しかし、それは一方で、一般鑑賞者を置き去りにしてはいないかという大きな問題をはらんでいます。
 私達の日本書道美術館では、書道をもっと身近なものとして、ゆっくりと作品に対峙していただける会場づくりを大切にしています。多くの作品の中から、時には、小品ながらも光り輝く存在を見出すことができるでしょう。書道は場の芸術でもあり、書作の場を大切に考えます。硯に水を注ぎ墨を磨り始めます。墨の香が立って気持ちが集中していきます…。その心が、最初の一画へと結ばれていきます。
 私達は伝統的な品格と品位ある書の継承を大切にし、当館創設の魂を学び、引継いで、これからも、我が国、世界にとって大切な日本書道美術館を運営して参ります。これからも、皆様の、あたたかいご協力、ご尽力、ご支援をお願いして止みません。

2020.1.23

日本書道美術館
館長 小山天舟

書の心

 「書の心とは?」と問われるとき、私は即座に「写経の精神です」と答えます。斎戒沐浴、一文字一文字敬虔な祈りをこめて浄書する。この清浄心即書の心であると心得、幾十年、私の一日は早朝の「般若心経」浄書に始まります。

確かな技倆
漢字、かなを並行して、古典に立脚した正しい実技の習得をめざす。
深い学識
書に関する学問を修める。
高い鑑賞力
広汎な美術品鑑賞を通して、確かな審美眼を養う。

この三条件が満たされたとき、はじめて、教養豊かな書道人として尊敬されるのです。

研鑽を積んで

 書道は、全国民共有の、世界に誇る伝統芸術です。私共は、先人の築いたこの偉大なる文化遺産をしっかりと受け継ぎ、研鑽を積んで、次の世代に誤りなきように伝える使命を自覚して、誠心誠意書道教育並びに、社会教育振興の諸事業を推進してまいりたいと念願しております。

理想の学び舎

 市井の書道教室は、実技指導にかたより、また大学にあっては、実技の練磨と鑑賞の機会が充分とは申せません。
 当館特設講座「書道大学」は、実技指導に、大学教授、日展審査員および同等クラスの書作家を、また、学術方面は、東京大学を始め、一流大学の教授、斯界のオーソリティを講師に招聘し、その上、美術館ならではの名品鑑賞の場を完備しております。
 まさに“理想の学び舎”と自負する所以であります。